第43期名人戦 挑戦手合第7局 井山裕太名人 vs 張栩九段

こんにちはー。くまぽろです。

遅くなってしまいましたが、

11/1(木)〜2(金)に行われた名人戦挑戦手合第7局。
これが最終局です!

棋譜や局後のインタビューをまとめました。
 
 

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最終局!

さてさて、ついに最終局です。

第7局は静岡県河津町にある
「今井荘」にて行われました。

海のすぐ近くで、対局室からも海が見えるとのことです。
 
 

右奥が今井荘。


対局室からの風景。


対局室の様子。
 
 
今回は最後に
局後のインタビューを聞き取ったものを載せたので、

先に囲碁めしのコーナーから行きましょう〜。
 
 

囲碁めし

対局者の昼食とおやつをご紹介します。
 
 
1日目昼食:井山さん「鴨南そば&まぐろ丼」

がっつり行きますね〜。
 
 
1日目昼食:張栩さん「鴨南そば&きな粉アイス」

お、二人とも同じ鴨南そばなんですね。
そして張栩さん、まさかのおやつフライング…!
 
 
1日目おやつ:両者「フルーツ三種盛り 〜マスクメロン、マスカット、柿」

後ろの赤いのはスイカかと思いましたが
葉っぱでした。
 
 
2日目昼食:井山さん「温かいきつねうどん」

一転して2日目は単品であっさりきました。
シンプルなきつねうどん。
 
 
2日目昼食:張栩さん「冷たいきつねうどん&きな粉アイス」

張栩さんもきつねうどん。
息が合っていますね〜。
そして、きな粉アイスどんだけ好きなんだ…笑
 
 
2日目おやつ:両者「フルーツ盛り合わせ」

秋っぽくてかわいらしい盛り付けですね。
 
 
さて、では本題の棋譜にまいりましょ〜。

泣いても笑ってもこれが最後。
二人ともがんばってほしいです!
 
 

棋譜

最終局は再度ニギリまして、
井山さんの黒番となりました。

黒:井山裕太名人
白:張栩九段

持ち時間は8時間。残り10分から秒読みです。

棋譜には、プロ棋士の解説を元にコメントをつけています。
 
 

 

 

271手をもちまして、白・張栩九段が4目半で勝ち、
名人位の奪取が決定しました!!

張栩さん、おめでとうございます〜!!
 
 
途中、黒が勝つ流れになったかと思ったので、
井山さんにとっては悔しい一局になってしまったと思います。

井山さんも厳しい日程の中、
本当におつかれさまでした。

お二人ともゆっくり休んでもらいたいですね。
 
 
今回は、局後のお二人それぞれのインタビューを
文字におこしたので載せたいと思います。

張栩さんのは特に長いですが、
とっても良い会見だったので
ぜひ読んでいただけたらと思います!
 
 

井山さんインタビューまとめ

– 本局を振り返って
難しいと思って打っていたが、
途中は良い感触かなと思っていた時期もあった。

中盤以降はわからないことだらけで、
最後は正しく打てなかった。
 
 
– 終盤のコウについて
コウははっきりまずいのはわかっていたが、
その数手前からどのような図が正しいかわからず、
形勢もよくわかっていない状態だった。
 
 
– シリーズを振り返って
今の自分なりに精一杯やったが、
大事なところで残念なミス、

それも含めて自分の実力なのだが、
そういう手が多く出てしまい、残念だった。

そういうところでしっかり打てないようではやはり厳しい。
 
 
– 最近の状況について
今年は自分にとって
厳しい年になっているという感覚はあるが、

まだ重要な対局が続くので
次の対局まで少しだけど時間があるので、
気持ちを切り替えて次に向かいたい。

こういう厳しい経験を糧にして、
時間はかかるかもしれないが、
またこういう舞台に戻ってこれるようにがんばりたい。
 
 

張栩さん記者会見まとめ

– 10期ぶりの名人位、5年ぶりの七大タイトル、実感は
目標としていたことではあるが、夢みたい。

長い間井山さんに勝てていなかったので、
シリーズ中に5年ぶりくらいに勝って

最終的に勝てるとは
おそらく誰も思っていなかったと思うが、
自分だけは「やれるんじゃないか」と思っていた。
 
 
– シリーズ前に、後半戦になれば
体力的に勝算があると話していたが、
戦略をもって名人戦に臨んだのか

戦略というほどのことではないが、
1局でも多く、粘り強く打っていって
7局目を打つことを目標にしていた。

早いうちに負け越してしまって
4局目も内容が悪く、

少し足の怪我の影響(ボルダリングで足を捻挫していた)
もあったと思うが、最悪の状況だった。

でもあきらめずに粘り強く、
悔いのないようにしっかりやろうと思った。
運がよかったと思う。
 
 
– 体力面でボルダリングが寄与したか
(怪我という)大きな失敗をしてしまったが、
怪我をしたことで気を引き締めて、
体力回復に専念し、

家にいる時間も長かったので
ふだんより勉強したかな(笑)
 
 
– この5年間で台湾に戻ったり、
ボルダリングを始めたりで明るくなったとのことだが

振り返ってみると
最後に棋聖戦で井山さんに負けたときは、

体力的に(もたずに)碁の内容が悪すぎて、
しばらくタイトル戦に戻れないと思っていた。

体力・気力、そして闘志も足りず、
仮に挑戦者になったとしても
勝つイメージがわかない感じだった。

時間が経つのが早く、あっという間に何年も経って
その間挑戦者に近いところまでいったこともあったが、
なかなかチャンスをつかめなかった。

若くて強い棋士もどんどん出てきて
気がついたらけっこう年寄りのほうになっていた。

でも、ここ数年間よくスポーツもするようになって、
むしろ若い頃よりも体力がついてきたと思う。

実際7局戦い抜いても
昔とちがって少したくましくなったかなと思う。
 
 
– 闘志に火をつけたのは
やはり連勝を続ける井山さんの存在だったのか

そうですね。やはり七冠もすごい偉業だと思うし、
圧倒的な戦績だった。

一時期タイトル戦で18連勝していたときも
あまり止まりそうになかったし、それを見て
僕はこれじゃあ情けないなと思った。

さすがに挑戦者になって
一度も勝てないというのは無いかな、と。
そういう気持ちで名人リーグをがんばっていた。

でも気がついたら(自分と打つ前に)
連勝が止まっていて、びみょうな気持ちになった(笑)。

でも、たしかに井山さんは強いが、
他の棋士も含めてこれじゃいけないと思う。
戦う前から負けるんじゃないかと思ってるようじゃ。

周りから見れば僕が勝つとは思っていなかっただろうが、
自分は最後は勝てると信じて戦わないと。

どんな状態でも必死に勝ちはもぎとる、
という気持ちは強く持っていた。
 
 
– 張栩さんが日本史上最強の棋士だと思う井山さんに、
必ず勝つという信念はどこからくるのか

ちょっとバカみたいな話だけど、
みんなに笑われてもバカをやり続けるというか、
一生懸命やっていれば必ず流れが変わる、そう信じていた。

気持ちだけは若者でいようと思っていた。
 
 
– 井山さんとひさしぶりに7局打って
どういう印象だったか

やっぱり強かった。
シリーズ通じていろんな局面で
「こういうところ敵わないな」と思うところは随所にあった。

ただそこは自分も自信をもって
僕も井山さんより強いところはある、
それを盤上で示していく、という気持ちだった。
 
 
– 判断の速さは自身でも強みだと感じるか
シリーズを通じて、
持ち時間の使い方は大きな違いが出ていた。

そういう判断の速さ、決断力が
一番の持ち味かなと思っている。

積極的に攻める姿勢を貫こうと思う。
 
 
– 昔とっていたころに比べて、名人位の重みは
久しぶりだったので
本当に多くの方に応援していただいた。

昔よく勝っていたころは
勝ってもあまり褒められなかったが(笑)、

今回は応援してくれた人を
喜ばせることができるのが一番嬉しいこと。
 
 
– 若いころに比べて自分が成長したと思う部分は
弱くなった部分はどうしてもあると思う。
でも体力や精神力は前よりも(強くなった)、
どうかな、結果が良かったのでそんな感じがするけれど。

今までたくさん七番勝負も戦ってきたが、
カド番になってから勝つことが少なかった。

それが今回は、後半追い込まれても
粘り強く自分らしい碁を打てたのは、
すごく自信になった。
 
 
– 7局目は人生の大一番と前に言っていたが、
それに勝ったいまの気持ちは

夢みたい。
シリーズが始まる前にも、目標としては
最終局までしっかり戦って
最後に良い碁で勝つのが理想的な勝ち方だと思っていた。

まさか本当に自分が夢見ていたような形で勝てるとは。

7局目というのは僕の中では
やはり特別な感情を持っていて、

今までも他の棋士よりは多めに経験してきたと思うが、
ひとつひとつが人生の節目のような感じがして、

1局の勝ち負けでシリーズ全体の勝負が決まるという、
究極の状態。

その中でどれだけ自分の力が出せるか、
どれだけ恐れずに進んでいけるか、
人間性も試されている気がしている。

もちろん勝ったことは嬉しいが、
思い切り自分らしく戦えたことで
すごく充実感がある。
 
 
– 今後の目標は
タイトルをとったことを意識すると少し気が重いが(笑)
世界でも全然勝てない状況が続いていて、

井山さんも一時と比べて
そこまで勢いが感じられないので、
日本囲碁界としてこのままじゃいけないと思う。

自分もその責任を背負って
先頭に立っていきたいと思う。

立場的にはナショナルコーチなのだが(笑)
若い人たちに良い姿を見せて

「僕がこれだけやれるんだから、
みんなももうちょっとがんばって」
という刺激になればいいと思う(笑)。

持ち時間の少ない対局では
あまり結果が残せていないので、

期待されてもちょっと気が重いが(笑)
もちろんがんばっていくつもり。
 
 
– 井山さんは厳しい日程だったが、疲れを感じたか
やっぱり強かったが、
井山さんの一番良いときと比べれば、
ほんの少しミスが出やすいかなと思う。

でも六冠、七冠とタイトルを同時に持つというのは
そういうことなので、それは当然なので、
代わってあげられるものなら代わってあげたい(笑)。
 
 
– 娘さんや家族の応援について
家族にはすごく応援されている。

いまは(碁の)内容もよくわかるようになったので、
良い経験になっているのでは。

(注:張栩さんは奥様もプロ棋士(小林泉美六段)、
娘さん(こすみちゃん)もプロを目指していると思われる)

足を怪我したこともあって
歩けるようになるまでもけっこう大変で、

献身的に介護してもらって
家族の支えがあってこそのことだと思う。
 
 
– 5年前に棋聖を失冠したときに
「またタイトルを取る」と宣言したのが実現した

そのときはもっと早く戻るつもりだった(笑)。

しばらくは辛い時期だった。

井山さんがどんどん上がってきて
どんどん活躍して、社会的な関心も
井山さんがいつ七冠をとるかという興味に集中していたので、
そんなところで戦いたくもないと思っていた(笑)。

国民栄誉賞までとった井山さんだからこそ、
この時期だからこそ、
絶好のタイミングなんじゃないかと思う。

もう気を使う必要もないかなと(笑)。
 
 
– ニコニコ生放送で見ているファンからのコメントを見て
全然流れていることを忘れていたので、
いろいろ調子に乗ったことを言ってすみませんでした(笑)。

今回はすごくたくさんの方に
応援していただいてる実感があるので、
応援の力がすごく大きかったんじゃないかと思う。

応援してくれた方に感謝している。
 
 

おわりに

張栩さんのインタビューは
疲れが見える中でもリラックスしていて

ぐっときたり、笑ってしまったり、
とても良いインタビューでした。
 
 
ここまで長々とおつきあいくださり、
ありがとうございました!

また他の棋戦でも棋譜解説などを
まとめていきたいと思いますので、
よかったら見てくださいね〜。

それでは、また。